ネコタミ第四章の12です。
『眠虎の民〜ネコノタミ〜』第四章の12です。
だいぶ遅くなって申し訳ない。
今回は本文が気持ちいつもより長いので、最後にちょっとだけ裏話を。
以下本文です。
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『眠虎の民~ネコノタミ~』
第四章『水の国の転輪聖王(チャクラヴァルティン)』【十二】
「本来ならば、あちらの記憶が確かなうちにテストを受けていただくのが先なのですが」
スズの少し先、先頭に立って歩くジョウゼンが振り向かずに話す。
売店と案内所があったロビーを抜け、四人はほとんど一列に並んでこの坎龍水宮の中央部に向かっている。
建物内部は奥と階下に向かうほど政治的に重要な施設があるそうで、八方向、方角事の建物に、それぞれ受け持つ行政の役割が決まっている。
たとえば入口になっている南側のロビーの階下にはエネルギーを司る『離火庁』が、反対側の北には情報や歴史を管理する『坎水庁』がある。
「今回は、こちらに来てからもう既に、大分、時間がたってしまっているので」
振り向きはしないがギンコに刺さるように言っているのが伝わってくる。最後尾を歩く当の本人のギンコは『どこ吹く風』の面持ちだが。
「坎王様のご意向もあり、まず最初にお会いしていただく事になりました。くれぐれも失礼の無いように」
やがて建物の外部、上階が屋根と壁付きの連絡通路になっている長い渡り廊下に出た。一階のこの廊下の両サイドには、柔らかな陽の当たる吹き抜けの中庭が広がっている。
数人が木陰で休めるほどの、やや大きな木とその下のベンチ。噴水と美しく敷き詰められた敷石は建物に入る前の情景と似ていたが、その中央にはスズが今まで見た事の無いものがあった。
「あれ、何ですか?」
いつものクセで、スズは振り向いてギンコに聞いていた。
「ん? ああ、あれが『魚石』だよ。せっかくだから観ていこう!」
言うが早いが、ギンコはスズのショルダーバッグの吊り紐部分をつかんで中庭の中央に向かって歩き始めた。
ほとんど後ろ向きに引きずられる形になったが、そのお陰でジョウゼンの慌てふためく様子を見る事ができた。
「だから何でこう好き勝手に寄り道を――」
彼には珍しく大きな動作で振り返ると、驚きと呆れの入り交じった表情でギンコに叫びかける。
「いーじゃん別にあと五分くらい遅くなったって。坎王様は許してくれるよ、誰かさんと違って、寛容で優しいし!」
今回は気のせいではなく、絶句したジョウゼンの表情が怒りで凍りつくのがスズの目にもしっかり見て取れた。
マンガだったら額に怒りのマークが浮き出ていることだろう。
何となくだが、彼本人の事よりも、王様を引き合いに出された事が許せないようだった。
どこか底知れぬ恐ろしさを感じて、スズは早足でくるりとギンコの歩む方向に体勢を立て直して、『魚石』の前に進み出た。
それは、直径三mほどの、横にした卵のような形の楕円形の水槽だった。
海底をそのまま移してきたような岩や砂に海藻と珊瑚があり、おおよそではあるが岩場や水中には十種類ほどの小さな魚や貝類などの生き物がいる。
地味なものも派手なものもいるが、基本的には南国の魚のようにカラフルで美しく、どの生物も色や形がそれぞれ違って面白い。
地球でも大型の水槽や水族館で普通に見られる光景だが、違うのは天井にもどこにも穴が空いていない事だ。
水槽の下には黒檀やマホガニーのような木材で作られた蓮を模した高い台座があるが、床面から何処かに繋がっているようにも見えない。
「これ、どうやって中に魚を入れたんですか?」
後で塞いだのだとしても、エサをあげる時にはどうするのだろう。
「後で魚たちを入れたんじゃなくて、坎石が長い時間をかけて固まって、結果的に中に閉じ込めちゃったんだよ。それが、『魚石』。すごーく珍しいんだけど、たまに海廊の工事とかで見つかったりするんだ」
「割って、逃がしてあげたりはしないんですか?」
何となく息苦しさを感じて、スズが尋ねた。
せっかく広い海に生まれたのに、閉じ込められたままでは可哀想な気もする。
「生まれてからずっと石の中にいるから、外に出すとすぐに死んじゃうのよ。気圧の変化とか、その中にいない病原体とかが原因で」
いつの間にかスズの隣に来ていたフーカが答える。
そう言われてみれば地球でも『ボトルアクアリウム』とか、『バランスドアクアリウム』とかいうものを自然や趣味を紹介する番組などで見た覚えがある。
酸素を生み出す植物や、水槽を清潔に保つバクテリア、魚のエサになるプランクトンなど、人工的に作るには奇跡的とも言えるバランスで整える必要があるそうだ。
「それに、外に出たら他の天敵にも襲われやすいしね」
ギンコが補足して説明する。「その分、新しい出会いもないけど」
確かにそれまで遭遇した事の無い敵がウヨウヨいる外の世界では、戦い方や逃げ方も解らないだろう。普通に外で育った種より襲われやすいのかもしれない。
「スズはどっちが良いと思う? 安全だけど何処にも行けないのと、危険だけど何処でも自由に行けるのと」
ギンコが、魚石の中でも一際大きな銀色の魚を見つめながら尋ねた。
魚たちは珍しそうに時にチラチラと、こちらを気にするように見て泳いでいる。
「それはその中の生き物で、頂点捕食者だった場合の視点では? 被食者側に生まれついた者にとっては、“安全”どころか永遠に逃げ場の無い牢獄でしょう」
スズが答える前に、やや後方で彼らを見ていたジョウゼンが口を挟んだ。
監獄をテーマにした映画か何かで聞いた、『死んではじめて出られる』と言うセリフがスズの頭をよぎった。
「分かりやすく言っただけじゃん、うるさいなぁ」
ギンコがしらけた口調で振り返る。
「そういう考え方が人類の無意識に思い上がったところだと言っているんです。
常に自分達だけが最高位にいて、最も優れた賢い生物だと思い込んでいる。
自然界の他の生き物の命など、取るに足りない物だと、己の欲を満たすために自由にしても良いと勘違いして疑うことも無い。その為にどれほどの命が無惨に奪われてきたか。
もしその中に人類がいたのなら、あっという間に全てを食べ尽くして全滅しますよ。
かつての地球がそうだったように!」
彼にしては珍しく、最後の一言は声を荒らげた。
「誰も今、そんな話してないじゃん。
だいたいボクはスズに聞いたんであって、お前には聞いてません〜〜!」
仮面で顔は見えないが、ほとんど子供がケンカをした相手に舌を出すような様子でギンコが答えた。ひょっとしたら本当に舌を出しているかもしれない。
「まったく、どこまでも幼稚な……。行きますよ! もう充分でしょう!!」
呆れ果てたジョウゼンは衣を翻してスズを招くように声をかけると、踵を返して渡り廊下の方へ戻り始めた。
「『愛する者か、敵対者か。共に生きる者で世界はいかようにも変わる』。って師匠も言ってたけどさ、お前はそうやって人類みんなを敵にまわすじゃん! 少しは人を信じてみろよ!」
ギンコがエッジの声マネを混じえて叫びながら後を追う。
そんな二人の背中を見つめながら呆れたようにフーカが言った。
「確かに一緒に閉じ込められた相手によって、そこが天国になるか地獄になるかが決まるのかもね」
そう言えばベタという闘魚がいたなとスズは思う。
ヒレが長く大きく、カラフルに光り輝くような体色もとても美しい観賞魚だが、オス同士を一緒に飼うと激しく争いあってお互いを傷つけてしまうのだ。
「でも、自分が無理に相手に合わせて好きな人と一緒にいるよりも、ケンカしながらでもお互い本音で話して正直でいられる関係の方が楽で楽しいってことはあるかもね?」
苦笑しながら肩をすくめて、フーカも二人の後を追った。
最後にその場に残されたスズは、改めて魚石の方を振り返って考えた。
『安全だが自由のない牢の中か、危険でも自由に生きられるシェルターの外か』。
かつての自分なら前者を選んだかもしれないが、今の自分はどちらを選ぶだろう。もし自由に選べるのなら――。
「君たちは、どっちを選ぶ?」
小さく、魚石の中の生き物たちに向かって問いかけた。
そして、もう振り返らずに三人の後を小走りで追いかけた。
【『眠虎の民~ネコノタミ~』
第四章『水の国の転輪聖王(チャクラヴァルティン)』【十二】了】
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はい。そんなわけで今回魚の『ベタ』を検索しましたら。
本当に、ほんっとうに、あんなに綺麗な生き物がいるんだなと。
何かもう、光り輝いているし、色も形も多種多様だし。
タブで常に検索ページを開いておいても目の保養に。
関係ないですが、『Hariqua』っていう宝石サイトさんも
美しいので常にその時好きな宝石のページが開いてあります。
(石のパワー的なことの説明も全体のデザインも綺麗で素敵です。
スピリチュアル嫌いな人には勧めませんが、私はそういうのも好き。)
そうすると表示される広告も美しいものばかりになるので眼福。
これとかジョウゼンの宝石に近いし。
自分が想像したものに似たものがあると嬉しい。笑
ベタのオスに生まれて美しい自分の姿だけ見て一匹で
暮らせたら幸せな気がする。良い飼い主さんに恵まれて。
でも自分の姿も鏡で見ると敵に見えて攻撃したりするんですっけ?
あと個人的には安全で清潔な場所で隔離されてご飯も美味しいなら
一人気ままに好きに生きていくほうが幸せだとも思うんですが、
なぜか人間以外の他の生き物になると「一匹じゃ可哀想かも」
と思ってしまうのも事実。これは何でなんだろう。
まあ生き物やその個体によって幸せも変わるんだろうけど。
スポーツマンタイプの人だったら外で動けないのが拷問だろうし。
自分に置き換えると、嫌いな存在と一生
閉じ込められて生きるほうが地獄なんですけどね。
本当に好きで、気の合う生き物少数と暮らせたら、
それが一番幸せかもですが。













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