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ウサギの涙

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2025年1月18日 (土)

ネコタミ4−10と、今回もちょっとオマケ。

前回もお知らせしましたが、『世迷言の方の、

ファンブログのサービス自体が終了になり、

2025年1月22日(水)に追加作成もできなくなるので

こちらにもネコタミの続きを掲載しておきます。

 

あちらのブログの方は、2025年4月22日(火)には

完全にサービス終了となり、閲覧もできなくなるそうなので、

小説の続きの更新やこの先のお知らせなどは、

こちらのホームページや小説ブログの方で。

 

以下、

第四章『水の国の転輪聖王(チャクラヴァルティン)』【十】

本文です。

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆  ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 
『眠虎の民~ネコノタミ~』

第四章『水の国の転輪聖王(チャクラヴァルティン)』【十】

 

「ちょっと失礼でしょ、お兄ちゃん」フーカが肘でギンコを突付いた。
 先程からやたらとジョウゼンの肩を持つように見える。

 スズの視線に気づいたのか、フーカは早口で答えた。

「ジョウゼン様は赤ちゃんの頃にこっちに来たの。だから、あっちの世界について覚えてないの。私と同じで」

 本人が気づいているかどうかは不明だが、いつもより口調が大人しいというか、丁寧になっているようだ。
 一人称まで、いつもの『あたし』から『わたし』に微妙に変化している。

「だから、だから何か親近感があるっていうか……、それだけだから!!」
 
 怪訝な様子のスズに、うろたえて聞いていないことまで答えている。
 仮面で隠れていて顔は見えないが、照れているのかもしれない。

「そう。だから同じマレビト同士、もう少しボクらにも愛想があっても」
 ギンコがそう言いながら、手近に飾られていた豪奢な花の花瓶から、一本の菊の花を抜き取った。

「良いんじゃないか、ってね!」

 その言葉と同時に彼の魔力を込めたその花を、矢のようにジョウゼンに向かって投げつけた。

 気配に気づいたのか、こちらに向かって振り向いたジョウゼンに届く前に、その花はやはり空中で動きを止めた。
 だが今度は目に見えない氷の壁で破壊されることはなく、彼の前面に盾のように浮かぶ水球が、花の茎の先を包むように捕らえていた。

 彼は呆れたような顔でギンコを見ると、スナップするように右手首を回転させた。

『射《いる》』

 中指をこちらに向けて弾くと同時に、茎と花を反転させた菊の花がギンコに跳ね返るように放たれた。
 しかしギンコはそれを叩き落とすように、彼の仮面に届く直前でそれを受け止めた。全てが一瞬のことだった。

「気にしないで。これも恒例行事みたいな、いつもの事だから」
 フーカが、ため息をついた。

「『氷瀑布《ひょうばくふ》』と『飛仙笠《ひせんがさ》』。
 ほとんど自動的に防御してくれるあいつのチャクラム」

 ギンコが何も無かったかのように、菊の花を花瓶に戻しながら説明した。

「『氷瀑布』の方は、目に見えないくらい小さな氷の針で常にあいつを守ってる。ほんと、冷たくてトゲトゲしい、アイスピックみたいな奴にピッタリ! で、『飛仙笠』の方は――」

「水属性だけでなく、相手によって防御法を変える万能な盾ですけどね。
 特に悪意のある生物の意思のある攻撃に対しては」

 階段を降りて、ゆっくりとこちらに歩み寄ってきたジョウゼンが、ギンコの言葉を遮るように言った。

「ところで、“アイスピック”は氷を砕く道具で、冷たくはないのでは?」
 と、明らかに見下した顔で冷静に指摘した。

「なっ、……じゃあアレだよその、何ていうか……『つららウニ』!!」
 ギンコがジョウゼンに向かって「これだ!」という顔で指をさした。

 氷柱《つらら》+雲丹《うに》。

 スズでさえ「小学生のあだ名か!」と声に出してツッコミたかったが、ひょっとしたらこの世界にはいるのかもしれない。
『つららウニ』という生物や魔獣が。

 ほんの数ミリほど、ジョウゼンの眉根のあたりがピクっと痙攣した。
 ように見えた。
 
 だが今度は完全にギンコを黙殺して、フーカの方に向き直った。

「お久しぶりです、フーカ嬢。この者たちは何か、あなたに対して無礼を働きませんでしたか?」

 “たち”のところで一瞬だけスズの方を見たが、その視線は背筋が寒くなるような冷たいものだった。先ほどネコたちに向けていた眼差しとは違う。
 
 近くに来たことで解ったが、彼の目の色は透き通るような赤い色をしている。『血も凍る』ような恐怖というが、まさに血が凍ったような目だ。

「大丈夫です! もし万が一、何かあっても、私のほうが強いので!」
 フーカが、ぱぱっと素早く顔の前で両手を振った。

 何だか動きがいつもよりコンパクトだ。
 スズの前で見せる、腕を組んだり、足を組んだりする、どちらかと言うと大振りで余裕のある動きとは違う。

「ちゃんと、『好きでもない男性には冷たいくらいでちょうど良い。』って教えを守ってます!!」

 フーカが胸の前でガッツポーズを決めた。

 

 【2025年1月18日 『眠虎の民~ネコノタミ~』
第四章『水の国の転輪聖王(チャクラヴァルティン)』【十】了】

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆  ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 

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オマケになるかどうかあれですが、写真は設定メモの一部です。

ジョウゼンのチャクラムの『飛仙笠』、最初はというか、

つい先日まで『飛笠』だったんですよね。

 

『飛泉』は高いところから落ちる水や滝のこと、

『氷瀑』は氷結した滝の事なので、まあどっちも『滝』なんですが。

 

坎王である孔を守るのが彼の役目であるので、

彼にとって相性の良い水属性に特化しつつも、

全属性に対応できないともしもの時に役目が務まらなさそうなので、

まあ笠も飛んでるし仙人っぽいし、音の同じ『飛仙』(空中を飛ぶ仙人)

って言葉もあるしで、直前にこっちに変更してみました。

 

そんな裏話でした。

それではまた。

 

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